「親が認知症になったら、銀行口座はどうなる?家族信託で何が変わるのか」
2026年10月05日 10:00
「親が認知症になったら、銀行口座はどうなる?家族信託で何が変わるのか」
「親のお金なんだから、子どもが代わりに使えばいい」
親が高齢になってくると、こんな話をすることがあります。
介護費用が必要になった。
施設に入ることになった。
病院代や生活費を親の預金から出したい。
ところが、親が認知症などによって判断能力が低下すると、話は少し変わってきます。
「通帳とキャッシュカードは子どもが持っているから大丈夫」
そう思っていても、親名義の財産を、子どもが自由に管理できるとは限りません。
そこで最近、注目されているのが「家族信託」という仕組みです。
今回は、できるだけ難しい法律用語を使わず、
・認知症になると何が困るのか
・預金や不動産はどうなるのか
・子どもが親のお金を使ってもいいのか
・家族信託をすると何が変わるのか
・メリットとデメリットは何か
・いつから準備すればいいのか
について、できるだけ身近な例で説明します。
1.そもそも「家族信託」って何?
「家族信託」と聞くと、何か難しい金融商品を想像するかもしれません。
でも、基本的な考え方はそれほど難しくありません。
簡単に言えば、
「自分の財産を、信頼できる家族に託して、自分のために管理してもらう」
という仕組みです。
例えば、お父さんが元気なうちに、
「自分が認知症などになって財産を管理できなくなったら、長男に管理してもらいたい」
と考えたとします。
その希望をもとに、財産を託す人と管理する人、そして財産を誰のために使うのかを決めておきます。
家族信託では、
①財産を託す人=委託者
②財産を管理する人=受託者
③財産から利益を受ける人=受益者
という関係になります。
ただ、最初からこの言葉を覚える必要はありません。
まずは、
「親が元気なうちに、将来の財産管理を信頼できる家族に託しておく仕組み」
と考えてください。
2.認知症になると、何が困るのか?
認知症になると困るのは、物忘れだけではありません。
財産について、
「これは自分のお金です」
「この契約をします」
「この家を売ります」
といった重要な判断をすることが難しくなる可能性があります。
例えば、お父さんが自宅を所有していたとします。
元気なうちは、
「施設に入ることになったら、この家を売って施設費に充てよう」
と考えていた。
ところが、認知症が進んでしまうと、本人による重要な契約が難しくなる場合があります。
「家を売りたいけれど、本人が契約できない」
となれば、家族としても簡単には進められません。
預金についても同じです。
介護費用や施設費を親のお金から支払いたいと思っても、本人の意思確認が必要になる場面があります。
ここで大事なのは、
「認知症になった瞬間に銀行口座が全部凍結される」
という単純な話ではない、ということです。
銀行によって対応も異なります。
しかし、
本人の判断能力が低下すると、これまで家族が普通に手伝っていたことが、そのままではできなくなる可能性があります。
だからこそ、
「まだ元気なうちに、どうするかを決めておく」
ことが重要になります。
3.預金・不動産はどうなる?
例えば、
・預金1,000万円
・自宅3,000万円
・その他の財産
を持っているお父さんがいたとします。
元気なうちは、自分で自由に管理できます。
ところが、認知症などによって判断能力が低下すると、財産の管理や処分について家族だけの判断では進めにくくなることがあります。
特に問題になりやすいのが「不動産」です。
例えば、
「父を施設に入れたい。そのために父の自宅を売却して施設費に充てたい」
というケースです。
元気なうちなら、お父さん自身が売却の契約をできます。
しかし、
判断能力が低下してしまった後では、家族が「父のためだから」という理由だけで、勝手に売却することはできません。
浦安くらしサポートでも、実際に「施設入居後の空き家問題や家や土地の売却について相談したい」という悩みを、認知症対策の重要なテーマとして挙げています。
【事例①】父が施設へ。空き家になった自宅をどうする?
例えば、浦安市に住む80歳のお父さん。
奥さんに先立たれ、現在は一人暮らしです。
最近、物忘れが増えてきたため、家族で相談して老人ホームへの入居を考えるようになりました。
問題は、その後の自宅です。
「誰も住まなくなるのだから、売って施設費に充てよう」
子どもたちはそう考えました。
ところが、お父さんの判断能力が低下してしまった後では、
「子どもが代わりに売ればいい」というわけにはいきません。
そこで、まだお父さんが元気で、自分の意思をしっかり伝えられる段階で、
「将来、自宅を売却する必要が生じたらどうするか」
「誰に管理を任せるのか」
「売却した場合のお金をどう管理するのか」
などを家族で話し合っておく。
その選択肢の一つとして、家族信託を検討することができます。
もちろん、すべての家庭に家族信託が必要というわけではありません。
任意後見や成年後見、遺言など、別の方法が適している場合もあります。
大切なのは、
「その時になってから考える」のではなく、「元気なうちに選択肢を比較しておく」
ことです。
4.家族が勝手に親のお金を使えるの?
ここは特に誤解されやすいところです。
結論から言えば、
家族だからといって、親のお金を自由に使っていいわけではありません。
親の通帳を預かっている。
キャッシュカードを持っている。
暗証番号を知っている。
だからといって、そのお金が子どものものになるわけではありません。
例えば、
「親の介護費用を払う」
「親の施設費を払う」
「親の生活費を出す」
ということであれば、親のための支出として考えられます。
一方で、
「子どもの車を買う」
「自分の住宅ローンを払う」
「自分の生活費に使う」
となれば話は別です。
家族間だからこそ、
「誰のお金なのか」「何のために使ったのか」
を明確にしておくことが大切です。
家族信託を作ったからといって、受託者が親のお金を自分のお金のように自由に使えるわけでもありません。
あくまでも、「信託の目的に沿って財産を管理する」ことになります。
【事例②】「通帳は私が預かっているから大丈夫」と思っていたケース
例えば、70代後半のお母さんと、近くに住む長女。
長女がお母さんの通帳を預かり、
「買い物や病院の支払いは私がやっているから、特に問題ない」
と思っていました。
ところが、
ある時からお母さんの認知症が進み、金融機関との手続きや重要な契約について本人の意思確認が難しくなってきました。
長女としては、
「今までずっと私がお金を管理してきたのだから、そのまま続ければいい」
と思っています。
でも、ここで一度立ち止まって考える必要があります。
「今まで手伝っていたこと」と「正式に財産管理を任されていること」は同じではありません。
そこで、
・預金
・年金
・不動産
・保険
・毎月の生活費
・介護費用
などを一度整理。
そのうえで、
「誰が、どの範囲まで管理するのか」
を家族で話し合います。
場合によっては、家族信託や任意後見などの制度を検討することになります。
このように、家族信託を考えることは、単に「銀行口座を子どもが使えるようにする」という話ではありません。
親の財産を、親のためにどう管理していくかを家族で決めること。
ここが本質です。
5.家族信託なら、何ができるの?
では、家族信託をすると何が変わるのでしょうか。
一番分かりやすいのは、
「親が元気なうちに、将来の財産管理を家族に託しておける」
という点です。
例えば、お父さんが元気なうちに、
「自分が判断できなくなった後は、長男に財産を管理してもらう」
という仕組みを作っておきます。
そのうえで、信託の対象にした財産について、あらかじめ決めた目的に沿って長男が管理します。
これによって、
「認知症になったら、誰が財産を管理するのか?」
という問題について、あらかじめ道筋をつけておくことができます。
■家族信託のメリット
① 将来の判断能力低下に備えられる
これが大きなメリットです。
元気なうちに財産管理の方法を決めておくことで、将来の不安を減らすことができます。
② 家族が財産管理を引き継ぎやすくなる
親が高齢になった後、
「誰が銀行手続きをするのか」
「誰が不動産を管理するのか」
を、あらかじめ考えておけます。
③ 自宅などの不動産について、将来の活用を考えやすくなる
施設入所後に自宅をどうするのか。
売却するのか。
賃貸するのか。
そのまま維持するのか。
こうした将来の選択肢について、元気なうちに考えるきっかけになります。
④ 家族で話し合うきっかけになる
実は、これも大きなメリットです。
家族信託を考えると、
「お父さんは将来どうしたい?」
「この家はどうする?」
「介護費用はどうする?」
「誰が管理する?」
という話をすることになります。
これが意外と重要です。
6.家族信託にデメリットはないの?
もちろんあります。
家族信託は「万能な制度」ではありません。
① 費用がかかる
専門家への相談、公正証書の作成、不動産を信託する場合の登記など、財産の内容によって一定の費用がかかります。
② 誰に託すのかが難しい
長男にするのか、次男にするのか。
兄弟全員で管理するのか。
家族の中で意見がまとまらないこともあります。
③ 何でも家族信託に入れればいいわけではない
家族信託は、親の財産を全部まとめて管理する魔法の箱ではありません。
何を信託するのか。
誰が管理するのか。
何のために管理するのか。
しっかり設計する必要があります。
④ 税金が安くなる制度ではない
これも重要です。
家族信託=節税 ではありません。
家族信託の大きな目的は、
「財産を守り、将来の管理方法を決めておくこと」です。
7.家族信託を始めるタイミング
では、いつ考えればいいのでしょうか。
私は、
「必要になってから」ではなく、「必要になるかもしれない」と思ったとき
が大切だと考えています。
例えば、
・最近、親の物忘れが増えてきた
・親が施設に入ることを考えている
・自宅を将来どうするか決まっていない
・親の預金を誰が管理するのか心配
・親が一人暮らしをしている
・相続について家族で話したことがない
こうしたことが気になり始めたら、一度専門家に相談してみる価値があります。
特に大切なのは、
親自身が元気なうちに話をすること。
家族信託は、本人の意思や判断能力がある段階で準備することが基本です。
認知症が進んでから、
「そういえば家族信託という制度があった」
となっても、本人の判断能力の状態によっては契約を進めることが難しくなる可能性があります。
だからこそ、
「まだ大丈夫」なときに考える。
これが一番大切なのだと思います。
8.家族信託は「相続対策」だけではありません
家族信託というと、
「相続のための制度」
と思っている方も多いでしょう。
もちろん相続を考えるうえでも重要な仕組みですが、私はむしろ、
「親が元気なうちに、将来の生活と財産管理をどうするかを考える仕組み」
として考えてみることをおすすめします。
認知症になったらどうする?
介護費用はどこから出す?
自宅はどうする?
施設に入った後の財産管理は?
誰が親の財産を管理する?
亡くなった後はどうする?
こうした問題は、実際にその時になってから考えると、家族に大きな負担がかかります。
家族信託だけですべて解決するわけではありません。
遺言が必要な場合もあります。
任意後見を検討した方がいい場合もあります。
身元保証や死後事務について考えておいた方がいい方もいます。
だからこそ、
「家族信託をするか、しないか」だけではなく、「自分や親のこれからをどう設計するか」
という視点で考えることが大切です。
9.最後に
「うちの親はまだ元気だから、まだ早い」
そう思っている方も多いと思います。
でも、親が元気なうちだからこそ、本人の希望を聞くことができます。
そして、家族で話し合うこともできます。
家族信託は、すべての人に必要な制度ではありません。
だからこそ、
「うちの場合、本当に必要なの?」
から考えてみてください。
まずは難しい法律の話よりも、
「親のこれからを家族で一度考えてみる」
ところから始めてみてはいかがでしょうか。
まずは、ご家族の状況をチェックしてみませんか?
★★「親の認知症対策チェックリスト」無料配布中★★
□親の預金を誰が管理するか決まっていますか?
□ 親が施設に入った後、自宅をどうするか決まっていますか?
□介護費用をどこから出すか考えていますか?
□親の財産について、家族で話し合ったことがありますか?
□遺言や任意後見について考えたことがありますか?
□認知症になった場合の財産管理について、準備していますか?
「まだ何も決めていない」という方こそ、一度チェックしてみてください。
浦安くらしサポートでは、家族信託だけをおすすめするのではなく、遺言・任意後見・身元保証・死後事務なども含めて、ご本人やご家族の状況に合わせて、これからの暮らしと財産管理について一緒に考える相談窓口を目指しています。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法律・税務・登記等についての判断を行うものではありません。実際に家族信託を検討する場合は、財産の内容や家族関係、本人の判断能力などを確認したうえで、司法書士・弁護士・税理士など必要な専門家への相談をおすすめします。